傷病手当金についての公式調査!現金給付受給者状況調査報告について

協会けんぽが毎年実施している調査の一つに、現金給付受給者状況調査報告(以下、調査)というものがあります。内容としては、傷病手当金と出産手当金の二部構成に分けて受給者の「性、年齢、標準報酬月額、傷病名、支給日数、支給金額、支給回数、支給期間及び事業所の状況」を公開しています。
本記事では調査内で興味深かった部分を、精神疾患にフォーカスを当ててざっくり紹介させていただきます。

本記事は傷病手当金の申請や受給を直接助けるものではありませんが、傷病手当金の申請、特に精神疾患での申請の割合が多く、特別なことではないと知っていただくきっかけになればと思います。それでは、よければご覧ください!

令和2年度(2020年度)の調査内容をご紹介!

毎年実施している調査なので令和5年度(2023年度)まであるのですが、あえて令和2年度をご紹介します。
なぜかというと、令和3年度分以降は新型コロナウイルス感染症に係る臨時的な取扱いによる影響で、コロナによる申請が急増して読みにくくなってしまったからです。令和2年度には0.7%程度だったコロナ等の割合が、令和4年度には48%を超える数値となっております。結果その他疾患の支給割合が大きく下がり、平均支給額も大きく変動していてあまり参考になりません。2023年(令和5年)5月に上記臨時的取扱いが終了したので、上記割合はじきに元に戻るかと思います。

上の表は、傷病別(ICD10基準)に分けられた、支給件数の割合になります。
上記「精神及び行動の障害」とは、精神疾患だけでなく行動障害、知的障害、発達障害も含まれた大区分になりますが、その総数に対する割合は32.72%にもなります
2位の新生物(がん等が含まれる区分)に大きく差をつけて最大の件数です。
この年の調査対象件数≒支給実績件数は 130,538 件であったため、実に年間42,000件超が「精神及び行動の障害」により支給されているということになります。
なお、令和4年度調査ではさらに大きく増加しており、56,000件超になっています。
つまり、精神疾患による申請は傷病手当金においては何も特別なことではなく、むしろ件数的には一番多いという結果になっています。

こちらは調査年度ごとの傷病別割合の推移になります。
こちらでも一番特徴的なのはやはり「精神及び行動の障害」であり、一番左の平成7年では4.5%程度だったものが令和2年では32.7%以上と急激に増加しているのが伺えます。
さきほどもご紹介したとおり令和3年度以降も増加傾向は続いており、諸事情を考量すると今後伸びが鈍化することはあっても、継続的な減少に転ずることは当面ないでしょう。

まとめ

今回は傷病手当金についての調査を紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか。
精神疾患の含まれる「精神及び行動の障害」が全件数の約1/3で協会けんぽ分だけで42000件超の件数。
精神疾患による傷病手当金の申請が何も特別ではないことが客観的にお分かりいただけるデータになっております。
同調査はこれ以外にも業種別や、事業所の規模別、都道府県別のデータも載っているので、ご興味がありましたらぜひご覧ください。

協会けんぽ:現金給付受給者状況調査報告のページ

全国どこでも、まんべんなく精神疾患による傷病手当金の申請は行われています。
被用者保険加入者の、当たり前の権利ですのでためらわずにご利用ください。

そして、お困りの際はこちらもなんらためらうことなく弊所に相談いただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

執筆:クレイド法務事務所 代表
   前田 健