傷病手当金の書類を書いてくれない!(病院編)

傷病手当金の申請書を書かない事業主の陰に隠れがちですが、こちらが問題とあることは実はよくあります。
今回は、申請書への証明を依頼しても病院側が応じてくれないケースについて解説します。

一度判断が下されると、できることは少ない

傷病手当金の申請にあたり、医師(療養担当者)の証明は必須です。
特に、「労務不能と認めた期間」については必ず記載してもらう必要があります。(「発病または負傷の原因/年月日」のように「不詳」でも通常は認定される欄もある)

しかしながら、以下のような理由から主治医が書いてくれない場合はよくあります。
・最後の受診からしばらく経つので証明できない
・途中の空き期間が長いので証明できない
・労務不能とまでは判断しかねる

そして、上記のような判断をされると覆すのは難しくなります。理由は主に2つで、
・医師が医学的根拠に基づいて(もしくは根拠が足りないから)下した判断であり、反論が難しい
・そもそも申請書に記載するのは当該医師の主観的判断で、そこに正解も誤りもない

高度な専門知識を持った医師の考えを改めさせるのは、決して簡単ではありません。

それでも一度は説得を試みよう

ではただちにあきらめるのか。私としては、それはもったいないと考えます。
医師も1人の人間ですから、対話によって良い方向へ向かう場合もあるからです。

少なくとも、なぜ書いてくれないかの理由を聞いた上で再度お願いし、それでもだめなら一部期間だけでも書いてもらえないか交渉する程度のことはしても良いと思います。

別の医師に書いてもらう

どうしても難しい場合は他に書いてくれる医師がいないかも検討しましょう。
とはいえ、ただちに他院で受診しても、初診日より前の日については証明しようがないのでその日以降の分からしかもらえません。よって、選択肢は限られてきます。
・他にもかかりつけ医がいれば、そちらで書いてもらえるかを検討する
・場合によっては勤務先の産業医を活用する方法もあり(長くなるので本記事では割愛)
 参考:○傷病手当金の支給に係る産業医の意見の取扱いについて(厚生労働省事務連絡)

まとめ:書いてくれない状況になると大変なので、予防しよう

主治医が書いてくれないと判断されることは十分起こりうる話で、覆すのが難しいのはご理解いただけたと思います。

一番大事なのは、あらかじめ主治医とやりとりをすることで、いざ依頼した時に書いてもらえない不安材料を消していくことにあります。
これについてもいくつか重要なポイントがありますので別記事とさせていただきます。
受診時の注意点:病院・医師が証明してくれないリスクを減らすためにできること

できることは少ないとは申しましたが、私の知識と経験からお手伝いできることがあるかもしれません。お困りでしたらぜひ、お気軽に相談いただければと思います!

執筆:クレイド法務事務所 代表
   社会保険労務士 前田 健