傷病手当金と失業手当(失業保険、基本手当)について

退職後に利用できる制度はいくつかありますが、失業手当(正式名称は雇用保険の基本手当。失業保険とも良く呼ばれます)を利用する方は非常に多いです。
本稿では、ケガや疾患により退職した方が、傷病手当金と失業手当を利用する上で注意する点を解説します。

傷病手当金と失業手当は同時にもらうことはできない

「退職日までに継続して1年以上の被保険者期間」などの条件をクリアしており退職後も傷病手当金を受給できる場合、傷病手当金と失業手当をどう利用すればいいか?という疑問が浮かぶことかと思います。

まず、前提として傷病手当金に関しては「傷病により労務不能である」ことが、失業手当に関しては「いつでも就職できる能力がある」ことがそれぞれ求められます。
つまり、両者は性質的に相反するものとされているため、両方を同時に受給することはできません。

就労可能になるまでは傷病手当金を受給し、就労可能になったらすみやかにハローワークで失業手当の申請手続き(求職開始の手続き)をすると良いでしょう。

いつから就労可能とするかは主治医とよく相談の上、診断してもらいましょう。

受給期間の延長を忘れずに

傷病手当金の受給が終わってから失業手当を、と計画している方でそれぞれの受給期間がある程度長くなることが見込まれる方は失業手当の「受給期間延長の手続き」を忘れずにしましょう。

この手続きは、離職日の翌日から1年以内の失業している日についてしか受給できないところを、一定の理由のある方はこれを最大4年まで延長することができるものです。
この理由には「病気やけがですぐに就職できない場合」も含まれています。

この手続きを失念していると、傷病手当金の受給終了後に失業手当が受け取れなかったり、離職日の翌日から1年の時点で、給付日数を残した状態で支給終了になる恐れがあります。

離職日から30日を過ぎたら手続きが可能となるので、ハローワークに必要書類を確認(離職票や傷病の証明書類)した上で申請書の様式をもらいなるべく早く申請しておきましょう。

まとめ

健康保険の傷病手当金と、雇用保険の失業手当。両者は同時に受け取ることはできませんが、うまく期間を調整することで療養期間と就職活動期間中に大きくすきまを作ることなくいずれかからの受給を続けることが可能です。

次回は、傷病による離職者が失業手当を受ける上で留意しておきたい「特定受給資格者及び特定理由離職者」について解説させていただきます。

執筆:クレイド法務事務所 代表
   社会保険労務士 前田 健